馬頭琴コンサート | |
日時 |
2019年5月19日(日) 開場14:00/開演15:00 (馬頭琴 美炎は17:15~出演予定) |
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会場 |
Tokyo Guest House Oji Music Lounge 東京都北区滝野川2-4-17 |
出演 |
馬頭琴 美炎 パーカッション 前田仁 |
チケット |
¥3000(+1order別) |
お問い合わせ |
王子ミュージックラウンジ 03-6903-7256 |
日没が夜9時ごろと分かって、アラームもかけずに目覚めた時間が起床時間。
ゆっくりアイルランドブレックファーストを下の階の部屋で食べる。
羊が草を食んでいるのが見える。
アイルランドを観光しているのはアメリカの人が多いのかなという勝手な想像。
先祖の故郷を見てみたいというような感じなのかしらと。
イングリッシュブレックファーストと何が違うのかよく分からないが、なんたらソーダというパンがアイルランド伝統のパンらしい。
昨晩のスーパーの買い物でそれを見つけて買って食べた。
食べたことの無い独特の風味があり、ふわふわというより、しっとりどっしりという感じで腹持ちがいい。
小さな黒いケシのみのような粒や、ナッツなども入っている。
この風味は何かハーブでも入っているか、発酵が独特なのか。
この旅ですでにやみつきになり、メニューにあると頼んで食べる。
帰る前日のスーパーではこのどっしりした伝統的なパンを買って帰るか迷ったが、すぐ車で山形に行く事を考えれば、山形はいつでも食べ切れないほどの料理が並ぶので、そこにこのパンが入る余地はないなと諦めた。
これを朝に食べて、昨日の残りのスーパーで買ったものをサンドイッチにして林檎と持って出れば充分だと思う。
結局この朝食べた食事で全く腹は空かず、山を降りて午後2時過ぎにせっかくあるから食べようかと、車の中で持っていったサンドイッチを食べた。
今日はまたここに一泊するので荷物をほぼ置いて、りんごとサンドイッチと雨合羽とカメラと水だけ持って出る。
雨を覚悟していたので登山用のかなりしっかりしたものを持ったのだが、こうくるくる天候が変わるのでは、降ってもまたすぐやむのかもしれない。
もっと手軽な雨具でいいのかもしれないと思う。
エリガル山は独立峰で木もないし、ゆっくり登っても往復2.3時間である事を思えば、途中雨に打たれても雨をある程度はじく上着を着ているし、車までは迷わず帰れるだろうと思い、結局この雨合羽もなんだか重くて車に置いていった。
宿のあるスリーブリーグは600メートルを超える断崖絶壁が欧州一の高さであり、景勝地として有名な場所だが、そこを外れるとのどかな牧草地が広がる景色で、小さな道を小さな丘の波を越えて車を走らせると、可愛いお家があちこちに点在していて、どの家もドアがカラフルで花が咲き乱れている。
そんな中、5月頭のアイルランドに咲いている花はハリエニシダとサンザシとガイドブックにあった。
ハリエニシダは、ゴツゴツした藪に真っ黄色な花がわんさか咲いていて、群生しているところが沢山あった。
なんとこの花は油分が多いため、発火して火事になる事もあるらしい。
ユキさんが、聞いた事もない面白い名前だね! どうしてもハリエ西田さんって聞こえるんだけど。と言って笑った。
西田さんいっぱいいるね〜とハリエニシダの群生があるたびに言うので、こちらもエニシダにハリのあるもの。というニュアンスで耳に聴こえていたのが、いつのまにか、ハリエ西田さんに聞こえてきた。
ドネゴール近辺もエリガル山の他に行ってみたい所の一つとして風の谷があった。
でものんびりと出たので、いくら夜9時まで明るくてもなんとなくまだ昼過ぎて山に登るなんて考えられないと思ってしまうのと、夕方から天気が崩れそうだと聞いていたから、帰り道に寄れたら寄ると思っていた。
点在する可愛いお家がいつのまにか無くなり、緑の草原から何も生えていない荒涼とした土地がうねうねと広がるエリアをどんどん車で走る。
私がイメージしていたアイルランドだ。
なぜこんな荒涼とした土地に惹かれるのかわからない。
丘を登って少しまた緑の土地になってきたなーと思ったら素敵な谷に出た。
おや?これはもしかして行きたいと思っていた風の谷か?
そうらしい。
通り道だった。
風の谷の上で話をしてる声がすでに響いているのがわかる。
・
・
更にこの谷を降りて北へ向かう。
ほとんど北の端まで行くとエンヤの実家で経営しているバーがあり、そこから小一時間のところにエリガル山がある。
まずはもちろんエリガル山を目指す。
なんかちらほらとうねる山並みのはるか向こうにエリガル山らしき頭の先が見える。
なんか高くない?
だんだん近くにつれ、エリガル山はあれだとはっきりしてくるのだが、ハッキリしてくればしてくるほど思ってたより高く見えて急斜面に見える。
細かい瓦礫の山とも見えて、あの急斜面で瓦礫だと滑らない??
と思う。
登山道があるのかもよく分からず、とにかく近くへ。
アイルランドに行くと急に決めてから、すぐにアイルランドを検索していた時に都内でアイリッシュミュージックのコンサートがある事を知ってチケットを取る。
その時に誘ったのが今回の旅のパートナーであるユキさん。
いくいくー!でもなんでアイルランド音楽?って聞くので、アイルランドに行くから!というと、私も行きたいなー五月の連休なら今年は10連休だからいける!と言われてすぐに飛行機のチケットをおさえたのだった。
今までアメリカやイタリア、イギリスやハワイのカウアイ島などもだいたい10万前後でチケットをとっているので五月の連休のお値段が心配だったが、まだ巷で10連休が話題になる前だったからか、その値段でとれた。
そしてコンサートに行くと、アイルランド物販ブースがあり、のぞいてみるとガイドブックがあって、その著者のナオコさんに会えて、見所を直接聞くことができたのだった。
アルタンというバンドがドネゴールにある湖の名前からとっていて、ドネゴール地方の民謡を演奏するということで、そのうちの一曲はどうも何処かで聞いたことがある曲だった。
地図を見ていてそのアルタン湖がエリガル山の麓にあると知る。
アルタンのCDジャケットがエリガル山を望む廃墟から撮っていたので、その廃墟もどこにあるんだろうね、とユキさんと話していた。
いよいよエリガル山に近づき、ふと脇をみるとあれじゃない?という廃墟がチラリと見える。
山を降りたら後で行ってみよう!となり、山の登り口みたいのはどこだろうね?と言いながらしばらく行くと、小さな駐車場があり、そこから登るらしかった。
駐車場からとにかく一番てっぺんを目指せばいいだけなのは分かるが、やはり登山道はなかった。
窪みはぐちゃぐちゃしていてぬかるんでいるので、それを避けながら細かく迂回してるだけで、なんとなく体力を使う。
やっとぬかるみエリアを抜けて、斜面を登り始めると大きな瓦礫がゴロゴロしている。
キラキラ光った水晶のような石や大理石のような石がゴロゴロしている。
エリガル山のエリガルというのは昔ギリシャ人が登って名付けた名前らしく、祈りという意味だそうだ。
ドネゴールに惹かれたのもこのエリガル山に惹かれたのも何かご縁だろうなと思わずにはいられない。
しかし、全く体を鍛えていない私は一番高いところまで行けるのか?半ば半信半疑で登っていた。
それでも独立峰であり、この辺りで一番高い山だから、てっぺんからの景色が見たい一心だ。
いや、ちょっとまって。
私はこうみえて高所恐怖症だ。
今まで撮ってきた写真。たしかに山の上だったり、どこの崖ですか?というビューから撮ってますが、撮影となると仕事モードになるのか、あまり怖くなくなるのだが、それが終わると急に腰がひけて、何ここ、むり。
となる。
学生の頃していた登山も、たまに巡り会うクラクラする場所はそんなに多くないし、むしろビルとか橋の上とかの方が怖い。
マンションの上の階のベランダとか、階段とか、少しでも隙間があるとそっから自分が落ちると思って足がすくむ。
実家の近所の高速道路の陸橋の網目からいつか自分が吸い込まれて落ちるに違いないと、本当にわずかな切れ目が怖くて三輪車で渡るのによほどの勇気がいった思い出がある。
頂上のあたりが、遠くから見た感じ、もしかして怖いやつ?っていうのが頭をかすめるが、三日月型のアルタン湖が見たいし、周りがどうなってるのかやっぱり知りたい。
途中まではまあ良かったが、半分から上が急に急斜面になってきて、瓦礫も細かくなるので、きっちり足を置かないとずるっとすべる。
そこで断念したオーストラリアからの夫婦がいた。
2.3時間のハイキングルート的な登山なので、みんなほぼ何も持たないで登っている。
途中の眺めも充分圧巻で、ふと我に帰ると怖くなりそうだが、素晴らしいという思いの方がまだ勝る。
それでもだんだん上に行くにつれて、ここで足を踏み外したらやばそうな箇所だらけになってくる。
ふと下からアップテンポで登ってくる杖をついた二人のおじいちゃん。
え?なんでそんなテンポ早いの?
あっという間に追いつかれる。
そして歌まで歌ってる。
はーい!
登るの初めてかい?それはおめでとう!
なんと日本から!
私はもう160回この山に登ってるよ!
65歳と75歳のおじいちゃん。
僕たちが行くルートをよく見ていて。
と右巻きに行くルートを行く。
そして何か、恐竜の巣のようなものがあった。
下の方に後で行こうと話していた廃墟のお城だと思っていたが、教会が見える。
上の湖が三日月型のアルタン湖。
下の湖はその反対にある、廃墟の教会のほとりの湖。
この谷がとても気に入った。
川筋が廃墟の教会の脇と小さな村を通って先の湖に注いでいる。
村の名前と谷の名前と結局分からずじまいだったが、この谷にはいかにも伝説とかがありそうだ。
恐竜の巣はこの谷に向かってあるので、本当にプテラノドンがここを飛び立って谷に行きそうな景色だよ。
いつまでもここでぼーっとしたかったが、時折吹く風が強く、吹き飛ばされたらかなり怖い場所。
やはり一番見晴らしもいいが、足がすくむ。
こういうところでジャンプしたりする人の気が知れない。
風が冷たくて少し雲が出てきた。
おじいちゃん達が、もうすぐ雨が降るから頂上でのんびりしてたらダメだよと言った。
のんびりなんてできない。
怖いんだもの。
スリルも増すが、エリガル山だけが三角にそびえているお陰でこれだけの眺望が楽しめる。
さて下ろう。
ずり落ちる瓦礫の斜面は神経を使う。
これ、スキーのくだりだと思って思い切って足に体重かけちゃう方がいいね。と若い頃はスキー狂いだったというユキさんが止まらないーといいながら斜面を降りる。
テンポ良く下るともういつのまにかぬかるみ地帯。
上から見ると、ぬかるみの少ないエリアがなんとなく分かるので、そこを早足でいく。
ふとポツンとちいさな雨粒があたる。
あ、雨だよ!
と言うと二人でまだこんなに早く走る体力があったのか。というほどのダッシュで車を目指す。
走る勢いに合わせるかのように急に雨足が強くなり、そのままの勢いで車に転がり込み、ドアを閉めた途端猛烈な豪雨。
なにこれ。
と笑ってしまった。 汗と雨でズボンが足に張り付いて気持ち悪い。
それでも3分ほどするとまた雨が急に止んだ。
では廃墟の方に行ってみようと車を出す。
その辺りにはハリエニシダさんが沢山いて、何ともいえないココナッツのような甘い香りが漂う。
ハリエニシダさんってこんな甘い香りだったのね。
この教会は日本では江戸時代の最期のあたりか、旦那さんが亡くなった記念に奥さんが建てた教会だそうだ。
建物の石は湖の底の石やエリガル山の石だそうだ。
塔の上に鳥の巣があって、ひなの鳴き声と親鳥の鳴き声がした。
昨日ドネゴールへ行く道の途中に撮影したちいさなお城の廃墟とは雰囲気が違う。
冷たい風が穏やかに吹き始めて冷えてきたので車に戻ってサンドイッチを食べる。
ドネゴールのチーズとサラミとソーダパンのシンプルなサンドイッチ。
麺だけ。とかパンだけ。とかご飯だけ。
という食事が続いても全然大丈夫な人なので、だいたいどこの国でも食べ物で暗い気持ちになることはない。
そこの国ではそこの国のものを飽きずに美味しく食べれる。
そういえば、プリンセスクルーズに演奏で二回、9日間ほど乗った時は食事に飽きた。
なぜかというと毎度レストランのフルコースが食べ放題だったからだ。
ご馳走というのは飽きる。
欧米ではサンドイッチは間違いなく美味しく安い。
あとアイルランドで重宝したメニューは今日のスープというお品書きだ。
サンドイッチ以外のメニューを頼むのには少し勇気がいる。
ものすごい量が出てきたりするからだ。
でも何かあったかいものが食べたいなという時に今日のスープは野菜とお肉のスープとあのアイルランドのソーダパンが添えられてきて、こちらの人は前菜として頼むのかもしれないが、私達にはこれがちょうど良かった。
ユキさんが持っていたアマゾンミュージックでアイルランドといえばという曲たちを聞こうと、アルタンやエンヤなどを選曲して聴きながら、そろそろ行こうかとなった。
帰りは行きとは違うコースで行こう!
と車が走りはじめると、さっきまで青空も垣間見れてていたが、すっかり雲がかかり雨が降り出した。
降りはじめると止む様子のない雨は空も景色もみんな白くしてしまって、冬に逆戻りしたような天気だ。
それでも久しぶりに使った体力と、山の景色などに体も心も満タンになり、ただだだ宿に帰るだけだった。
1時間も行った頃か、どちらからともなく、エンヤのバーに行くの忘れた。と言った。
え!?
えーっ!!
さっきエンヤ聞いてたじゃん私達。
完全に忘れてたね。
という事になる。
でも私は全然平気だった。
ちょうどアイルランドへ行く前々日、エンヤの特集番組を見た。
実家のバーが出てきて、すっかり私は行った気になり、もういいか。って気持ちの方が大きかったようだ。
そして今日はもうこれで充分だった。
外はすっかり冷たい雨で、サンドイッチのせいかあまりお腹すいていなかったが、何か暖かいものを食べたくなった。
まだシーフードにありついてないね。
私のお目当ての生牡蠣とユキさんお目当てのムール貝。
宿の方面にある海辺の町にシーフードレストランありそうだよね。
と目指す。 そんな看板があったので、入る。
牡蠣とムール貝はなかった。
でも食べたいと思ったのはシーフードチャウダーだった。
今日のシーフードチャウダー。
ソーダパン添え。
こってりしていて濃厚なシーフードの出汁がきいている。
最後は食べきれないほどたっぷりだった。
宿についてひたすらねむる。
止みそうにない冷たい雨はそろそろ魔法が切れて明日は1日中雨かもしれないなんて思う。
それでも全然悲しくはない。それほど素敵な田舎での2日間だったので、もう何もなくても文句はない。
明日はスライゴーに移動だ。
時刻は6時過ぎていたと思うから、もう日が暮れるかなと思いながら山の上へ。
スリーブリーグ。
6百メートルほどの断崖絶壁は欧州一と言われている。
その名所に一番近い宿を目指す。
グーグルマップはまだ先、まだ先を案内する。
ゲートがあった。
アイルランドのガイドブックを書いたナオコさんから直接このゲートを更に進んでいくと信じられない景色に出会えると聞いていた。
ゲートの前には駐車場があり、数台の車がとまっていて、そこから歩いて行く人達が更に上に行くのであろう。
果たしてこの先に本当に宿があるのか?
何度か確かめたが、ナビは更に上に行けと言うとる。
このゲートの中に車で行ってもいいのか?
帰ってきた車が一台ゲートを開けて出てきた。
とりあえず行っても良さそうだ。
ゲートの先はナオコさんが言ったように確かに別世界だ。
ここを車で行けるの?というような道をいく。
もうおそらくこの先には宿なんて絶対無いだろうとはわかっているが、この先のどこかにたどり着くまでは行かなきゃ。
小さな駐車場があり、車をとめる。
すごいね。
この景色。
写真撮ろうよ。
うん。
遊歩道と柵のある方は人もちらほらいるから、そこより山側の小高い丘の方で撮ろうか。
ミラクルには続きがあったんだなーとぼんやり思いながら。
ドイツ人のおじいさんが一眼レフのカメラを構えながら私たちに気がついて遠巻きに私の写真を撮りにきた。
そしてそのまま後ろの小さな茂みの中にスローモーションでひっくり返った。
スローモーションだったので、怪我はなさそうだったが、おじいさんだし、ゆきさんが駆けつける。
腰が抜けたのか、なかなか立ち上がれなくて、ユキさんが苦労して起こすと、ドイツ訛りだったらしく、大きな声でユキさんがドイツ語でシューベルトの野ばらを歌いだすと、おじいさんも喜んで大きな声で歌い出した。
転んだ後にこんな絶景で大きな声で野ばらを歌ってる二人がなんだかおかしく、かわいかった。
流石にそろそろ陽が暮れるかなと思っていると、ビューポイントと反対の方にうっすらと虹の端が出た。
ビューポイント、つまり海の方を眺めている人達は全く気づいてなかったが、ユキさんに虹と撮ってもらった。
羊の親子が虹の方にのそのそ歩いて行って、写真に写りこむのが面白かった。
すぐに消えてしまうだろうからと、二人で夢中で撮影した。
そのうち虹が大きなアーチになって、ずっとそこにあった。
ありとあらゆる構図で撮ってみたが、何を撮っても素敵だったし、何を撮っても撮りきれなかった。
それでもまだなかなか陽は沈まない。
もう充分だね。
真っ暗になったら道が怖くなるから戻ることにする。
宿はゲートに戻ってしばらく下ったところにあった。そういえばここ通ったし、私はこのゲストハウスの看板を何気なく見ていたのに。
新しくきれいな宿でオーナーが二階の部屋を案内してくれる。
この天窓からは星が見えるよ。
ここには2泊の予定だったから、明日はどこへ行くんだい?と聞かれた。
えーと、山登り!
山の名前が思い出せなくて、ドネゴールの山。
としか言えないでいると、この山かい?
とベットの上に飾ってある写真を指差した。
あ!
これです!
エリガル山。
同じドネゴールにあるとはいえ、結構この宿からは離れているのだが、一目見て気に入ったこの山の形ははっきり分かる。
素晴らしいね。
楽しんで。
夜はベットで買ってきたチーズやパンやサラミや果物をワインとつまみながらもう何が一体ミラクルなのか分からんというようなお腹いっぱい感があったが幸せだった。
ユキさんがシャワーを浴びている間に写真を見返していて眠くなったので小さなあかりにして横になる。
ユキさんが出てきて寝る支度をするとベットに横になってあかりを消した。
ほどなく、ミホさん!!!
星!星がやばい!!
ユキさんの真上にあった天窓から満天の星だった。
窓を開けて冷たい空気に顔をうずめながらしばし星空を眺める。
明日も素晴らしい1日になるに違いない。
The Miracle is this.
The more we share.
The more we have.
アイルランド。
ミホちゃんアイスランド行くんだよね?
いや、アイルランドだよ。
ミホちゃんアイルランドってイギリス?
アイルランドはイギリス島の隣にある島国。でも北アイルランドはイギリス。
???
というやり取りを色んな人としました。
都内の大きな本屋に行っても二冊ほどしかガイドブックがなく、調べたい事があまり出てこない。
アイルランドが日本では割とマイナーなのだと行く事になってから気づく。
この10連休、さぞや混むかと思いきや、格安チケットなので厦門で乗り換え、オランダで乗り換えしてやっと着いたダブリン。
どんどん日本人が減っていき、オランダまで一緒だった人達は皆パリに行くようだ。
ダブリン行きの小さな飛行機にはこの旅の相棒のユキさんと二人だった。
そしてダブリンでさえ、日本人を見かけたのは旅を通して2回ほどだ。
厦門の乗り換えで飛行機が遅れ、オランダ発に乗れない予定が、ダブリン行きも遅れたので乗れる事になった。
オランダのスキポール空港はとても広く、ショッピングモールのようで、快適に過ごせるスペースが沢山あり、ここで数日暮らせるんじゃないかなと思う。
チーズの試食が美味しすぎて止まらない。
お土産を買うのは帰りの乗り継ぎまでお預け。
まあそんな訳で乗るには乗れたが朝ダブリンに着くはずが、夕方着いた。
ユキさんが旅先で知り合った友人、ダブリン在住のピーターと100年前のパブで待ち合わせ。
FAGAN’S
もちろん。
ギネスビール。
なんと最初注ぎたてはちょっと茶色い。
ここで飲んではダメ。
119秒待つ。
真っ黒になる。
あまりゆっくり飲まない。
みるみる苦くなるのだ。
カプチーノの泡のような生クリームの泡のようなクリーミーでビールとは思えないような泡と喉越し。
私はお酒の味はどれも好きなのに、アルコールに弱い。
でもいつもよりテンポ良くのめる。
それでもテンポがだんだん遅くなると、ピーターに、これはもう飲まない方がいいよ。
飲んでみるとなるほど苦い。
というかこの苦味が元々の味だと思っていたからびっくり。
ゆっくり飲むならハーフパイントを頼めばいい。
ふとガイドブックで読んだ、ウイスキーはアイルランドが発祥とは本当か?と聞くと、そうらしい。
一時期下火になったが、今はアイルランドブランドが幾つも復活している。
おススメをお店の人にちょっとだけ味見させてもらう。
ブランデーかと思うような香り。
ギネスビールで煮込んだビーフパイを注文。
トロトロで美味しい。
思わず帰りのスーパーでギネスビールのステーキソースというのを買ってしまった。
ステーキなんて焼いた事ないのに。
あ、一度だけアラスカで現地のネイティブアメリカンの人に自分で狩ったムース(ヘラジカ)の肉をもらってテントの中で焼いて、持ってきていた醤油とバーターとニンニクで食べて、ステーキってこんなに美味いものなのかと思ったな。
ピーターが、私の名前のミホは、アイルランドの元々の原語であるゲール語で聖ミカエルと同じ発音だよと教えてくれた。
国によってミカエルの発音が様々に変化してマイケルとか、マイケルの愛称のミッキーも聖ミカエルと同じと思うと、ミホもあり得る。
それもゲール語とは、なんか嬉しい。
どのくらい滞在するの?と聞かれて一週間というと、オウ!!ノウ!!なんて少ないんだ!!ととっても残念だという顔をされる。
これは旅先の色んな人に言われ、その度にこちらの人のホリデーは徹底的に旅したり休んだりするのだろうなと想像する。
日本では10連休もどうするんだ!!って長すぎて困るという人すらいる。
どこに行くの?と聞かれてドネゴール!というと、オウ!!それは素晴らしい!!
すごくいいところだよ!
でも観光客もいないし、言葉が通じるか分からないよ!
ガソリンに気をつけて!
と賞賛と心配をされる。
何しろドネゴールは名前の発音が気に入って、北の果てという私の大好物とも重なり、とにかく一番行きたいところ。
は、真っ先に行く。
結局、飛行機遅れてダブリン観光もしないままにいきなりドネゴールへ行く事になった訳で、フリーの旅なので、次の日ダブリン少しまわってからドネゴールへ行くのもありだったが、通り越してドネゴールへ向かう感じがワクワクした。
高速道路M3でドネゴールを目指す。
今回はレンタカーの旅なので撮影で衣装もあるため、スーツケースにした。
前回のイギリスの旅はバスや列車移動なのでバックパック。
スーツケースは随分古くなったので思いきって新しいのを買った。
今はケースがガタガタになっても壊れないチャックで閉めるタイプが主流だそうだ。
軽くてタイヤもスムーズでストレスフリーだ。
イオンで1万円ほど。
今回は演奏旅行ではないので、いつも弾いている馬頭琴ではなく、撮影用?のものを、以前使っていたケースに入れて持っていく。
乗り継ぎが多いので紛失や破損が心配だからだ。
楽器のために席をもう一つ確保できる身分になりたい。
もしくは楽器のためにもう少し飛行機が優しくなってほしい。
レンタカーは飛行場で借りる。返すときは早朝なので、ガソリンを満タンにして返さなくてもいいやつを選ぶ。
頼んでいたのよりグレードの高いもので、日産の聞いたことも無い名前の青い車。
車高が高くてかっこいい。
グレード高くなっても値段は同じだからラッキーだった。1日五千円くらい。
二人で割るとかなりお得。
レンタカーのおじさんが、北アイルランドに行くか?と聞いてきた。
ロンドンデリーにはもしかしたら。と返すと、北アイルランドはイギリスだから、保障が違うから、行くなら事前にその分を支払う事になると言われて、その場で行かないと決める。
なんだか面倒そうだから。
おじさんはその後色々丁寧に教えてくれたが、二度も三度も本当に北アイルランドに行かない?もしも行くならば必ず電話をちょうだいと言うので、分かった。と言いながら、ロンドンデリーの方も興味はあったけど、時間が足りないから行きたくても行けないから、行く事はないと思いながら。
M3の高速道路は、ゲートがあって、1.50€を2.3回支払った。
安いので良かった。
パーキングエリアとかないなーと思いながら1.2時間も行くと、いつのまにか道路が国道に切り替っていて、のどかな牧草地を突っ切る田舎道をひたすら行く。
100という数字の看板があり、100キロで走るらしい。
家のようなものが出てきて、それがすこし多くなると、50という数字になって、みなそれに従う。
グロッサリーやレストランなどもあったりして、街の中で休憩する形だ。
ミシュランの現地の地図を新宿の本屋で買って、ルートの目星はつけていた。
大きな湖が二つあって、その辺を通りたいと思っていた。
Googleナビはその湖を迂回するように言ってきたのでナビを切り、地図で湖を目指す。
特に湖の先端の町、エニスキレンという街の名前が気に入って、(どうやら私は気に入った発音の場所に行きたくなるらしい。)
そこでお昼を食べようよ!と提案。
街に入ると早速教会の塔が目につく。
まずはそこを目指すと無料駐車場が一つ分だけ空いていたので、停める。
公衆トイレもあり、パーキングエリアとかコンビニとかなくて、トイレはレストランなどに入らないとダメかなと思っていたので、良かった。
教会のショップがあり、中に入ると素敵なものが色々あるので見てまわる。
小さなものをいくつかレジに持っていくと、おばあさんが、たどたどしくレジを打ち、なんか計算間違ってる気がしていると、奥から出てきたおじさんが手取り足取り教えている。
教会だから、そういう方でも積極的に雇用しているのだろうと思って、でもレジの打ち間違えは大丈夫なのだろうか?と余計な心配をする。
ふとこの教会の名前をみると、セントミカエルだ。
ミホの教会だー。なんて言いながら、昨晩聞いた話の後だったので偶然がよりワクワクしたものになる。
お腹ぺこぺこだったので教会を出るとすぐに目についたサンドイッチ屋さんの看板目指す。
入るとなかなか賑わっている。
美味しい証拠だ。
ふと座った椅子の壁にこんな言葉があった。
ミラクル。
うん。たしかに。
日本からずっとアイルランドの週間予報は雨だった。
ダブリンだけじゃないかと思っていたらドネゴールも。
ピーターにも雨だし寒くなるよ。
と気の毒な感じで言われて、本当にずっと雨だったら山にも登れないし、写真も撮れないし、どうなるかしらと思った。
車で高速道路を走っているとき、何度か土砂降りになり、二人ですこし暗い気持ちになったりした。
でもどこかでは必ず晴れる。と思いながら。
ユキさんは移動中はじゃんじゃん降って!!
着いたら晴れて!!
と言うとまさにその通りになった。
エニスキレンについた頃には青空だったからだ。
イギリスもそうだったが、アイルランドの天気はくるくる変わる。 それなのに天気予報ができるのだろうか?と思う。
ミホはゲール語で聖ミカエルのことで、寄った街の教会が聖ミカエル教会で、雨予報が晴れたからもう充分ミラクルな気持ちが二人で高まって、この言葉を見つけたときは、本当だね!
今回の旅はこれだね!
なんて盛り上がった。
しかも、お店に入った時に混んでいて座る席が乏しかったので空いていた通りの近くの席にミカエル教会でもらったパンフレットを二つ置いておいた。
でも列に並んでいる間に気づくと別の人が座っていて、席が埋まっており、見まわすと奥の方にお皿は下げてなかったが空いた席があったので移動した、その席の真横にこの言葉があったのだから、より二人でその偶然を喜んだ。
女子はこんな小さな印を見つけては盛り上がる。
小さな頃に庭で木の実や虫や小さな発見に胸がワクワクしたのに似てる気もする。
好きな惣菜を選んでお皿に盛ってもらい、会計をする時に、レジのおばさんが、あら、これなの?と紙幣を受け取って困った顔をした。
この街には何か独自の通貨でもあるのか?とちらりと思う。
その後、雑貨店でポストカードを買ってお会計をした時また同じ反応だったのでたずねると、なんとここは北アイルランドだった。
教会のおばさんはぼけているのでもなんでもなく、アイルランドの€紙幣を北アイルランドのイギリスポンドが流通している街で使おうとしたからだったのだ。
まさか。
北アイルランドはもっと北のはずだと思い込んでいて、通ってみようと思っていた湖が北アイルランドであることに気づかなかった。
そういえば道の標識も若干変わった感じがしたし、街の車のプレートも白から黄色になっている。
あんなにレンタカーのおじさんに北アイルランドに行くなら電話するようにと言われ、行かない?
行かない!とやり取りしたというのに。
国境もなんにもないのでここからイギリスとも書いてないのでまったく分からなかった。
まあ電話すればオッケーという事だったので、入ってしまったものは仕方ないが、ここまで何事もなく幸い。
国境といえば、内モンゴルとモンゴル国の国境をやはり、車で越える時に、何時間も平原で待たされ、トイレに行きたくなり、茂みを探して歩いていたら、勝手に国境を越えていて、戻ってきてまた国境を越えたという事で逮捕されそうになったことを思い出した。
あの時とはまただいぶ事情が違うが、海外に出ると日本では経験できないことがやはりある。
また地図でナビしながら、ここはなんか良さそう!というところに寄り道することにする。
お城の廃墟なんかで写真が撮れたらいいなと思ったのだが、人が居るところだとできないし、誰もいないような所がないかなと思って地図をみていると、ここはそうなんじゃないかという気がした。
そして人の牧草地の小さな小道のようなところを通って誰もいない小さなお城の廃墟に辿り着く。
長閑で鼻歌が出てしまいそうなところだった。
廃墟だが、暗い感じがしなくて、晴れていたこともあり、誰もいない事もあり、写真を撮りながら楽しく過ごす。
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そろそろ4時頃だったので、あーいい1日だった。そろそろ宿のあるドネゴールのスリーヴリーグへ向かおうなんて、再び出発。
ほどなくドネゴールに入り、宿を目指す。
この宿はbooking dot comで見つけた。
スリーヴリーグは欧州一の高さを誇る断崖絶壁だ。
アイルランドではモハーの断崖が映画のロケ地としても有名だが、こちらは観光客がたくさんいるらしいのでやめた。
そのスリーヴリーグから一番近い、つまり街からは一番遠い崖の中腹のどこかにあるだろう宿だ。
夕飯を頼んでいないので、その最寄りの街も宿からどの程度離れていて、レストランなど何時まで営業しているかも未知だったので、途中グロッサリーを見つけてパン、チーズ、サラミ、野菜、ワインなど買っていく。
Googleナビさんに宿の名前を入れて向かう。
日没が何時か調べてなくて、なんとなく遅いのかな。というくらいの認識だった。
でも名所のスリーヴリーグまで行ってしまって、帰り真っ暗だと車の運転も崖から落ちたら嫌なので宿についたら、スリーヴリーグは明日の朝にするか、そのまますぐ行くか陽の傾き加減で決めようと思っていた。
続く。
やっぱり分かりやすいのが好き。
久しぶりにあさのあつこさんの小説を読んだ。
彼女の江戸時代の時代小説が好きなのだ。
読んだことない人はぜひおススメ。
読み出しから読者を引き込むのがうまい。
そして文章の作りが難しくない。
するする分かる。
そして情景が怖いくらい浮かぶ。
景色と登場人物の心情が風景の中の風の音や生き物の声に代わって描き出される。
ゾワっとして、自分がそこに居るような気になる。
音楽も同じだな。
自分で作る曲もそうありたい。
私は名作と言われる文学をあまりたくさん読んでいない。
難しくて分からなくなって投げ出してしまう。
海外のものだと訳者のせいにも出来るかもしれないけれど、単に私の頭がバカなのかなとも思う。
しかし父は言った。
読み出してつまらなかったら読まなくていい。
面白くてスーッと読めてしまうものをどんどん読め。
父は本を読むのが仕事の半分以上だったので、分からないとかつまらないとかいうレベルを越えていたと思うが、そう言われて、惹きつけられるものに出会えた時の喜びを思う。
久しぶり父に会いたい。
懐かしくて、ではなく沢山聞きたい事がある。
子供の時の鹿児島湾の海に潜って海の中から桜島の噴火を見たこと、その火山岩を削って彫刻を作って遊んでいたこと。
彫刻家になりたかったこと。
戦争に行ってロシアで捕虜になり、ロシアの人達の暮らしぶりや考え方。
人形劇に関わっていた時の話、ドラマ論のことや、ファンタジーを創作するのに必要な条件は何かとか。
父の著作の中に探せばある話が多いのだが、ほら私は面倒くさがりだから探すのがね。
父の語りは人を惹きつけた。
娘である事を忘れていつまでも聞いていたかった。
父の講義は考えなきゃいけないシーンが沢山あって気を抜けない。
でも自宅でご飯を食べた後や、そんな時に体調がいいと話してくれた話は面白くて面白くてこのまま時間が止まればいいと思った。
さて
明日4月27日は千葉県茂原市でまことの里コンサートです。
連休の終わりの頃5月6日は山形県小国町でコンサート。
お待ちしています。
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