2016
さっきも聞いた気がする。
鐘の音。
腹に響くような、最後の響きはなぜかせつなくなる。
ヨーロッパに来ると、古い町で度々この鐘の音を聞く。
その時に、あ、ヨーロッパにいるんだなって実感する。
春にベネツィアで。
初夏にスイスで。
ミラノからローマへ戻る列車の中で大きな湖がみえて、そのはるか向こうにちらっと雪を頂いた山脈が見えた。
アルプス行きたいな。
次イタリアに来る機会があったらアルプスへも足を伸ばそうと思った。
そしたら、自分は初夏にはスイスのアルプスに来ることができた。
アルプスを挟んで向こう側とこちら側。
それなのにスイスで食べるパスタはひどい。
よく知り尽くしている日本大使館の大使夫人、佐野美代子さんは、パスタなんか頼んじゃだめよ。とにっこり言う。
何が食べたい?
ときかれて、一も二もなく、チーズフォンデュ!
子供の頃、なぜか母が好きでよくチーズフォンデュを作ってくれた。
それ以来食べてないので、本場の味を試してみたかった。
そしたら、美代子さんは、ここは間違いなく美味しいという所へ連れて行ってくれた。
その前にハイキングの途中で、道を塞ぐ牛の群れに遭遇して、通れないじゃない!でもチーズフォンデュをみんなに食べさせなきゃ!
っていう熱意だったかどうか定かじゃありませんが、今更引き返せないわ!と思っていたらしいですが、
私が何事もなく牛を脇にどけながらさっさと通ってしまったので、えらく驚かれたようです。
だって牛の世話をしていたことがあるんですよ。高校時代。
そうそう。ポラリスとジュピターというジャージ種の牛がいて、クイーンという和牛が、気性が荒くて、搾乳している間にいつ回し蹴りが飛んでくるかわからない。
じゃんけんに勝つと、私は必ず牛の餌にする草刈りの作業がお気に入り。
牛飼いのナオキ先生はヨーロッパの死神が持っている大きな刃のついた背の高い鎌をもっていて、それと柄の長い草を集めて刺すフォークを持って、軽トラの荷台に乗り込む。
ナオキ先生が学校よりさらに山奥の人里離れた滝という僻地へ連れて行き、牧草地の草を一面刈る。
刈って刈って刈りつくした後はフォークであつめて束ねて刺して、テコの原理で肩に担いで荷台に放り投げる。
どういう訳かこの行程のすべてが私にはお気に入りで、特に一面のそよそよと風になびいている草の海の前で、どっから刈り始めようかなって思う瞬間が好きだった。
それと、もちろん草の山になった荷台の上に潜り込んで再び滝からの山道を風に吹かれて荷台の上から空を見ること。
朝の日の出の頃の作業の時間と午後学校の授業が終わった後の作業の時間が待ち遠しい。
草刈りができるかもしれないと思うと、うっとりしてしまって、朝、授業の前に、講堂にあつまり、パイプオルガンの美しい音楽の中、皆で賛美歌を歌い、聖書の聖句を読み、当番の子が感話を述べてる間もずっと、前の席に座っている男の子の坊主が少し伸びた短い髪の毛をじーっとみながら、こっから刈りはじめて、その後ここへいって、ここで終わる。
って、妄想。
やばいですね。
なんなのかしら。あの草刈り熱は。笑
卒業生は北海道で開拓牧場をしている人が多く、修学旅行はそこへ入り込んで実習する。
べつに農業高校ではなくて、普通高校だったんですけどね。
なんとなくそんな雰囲気とここスイスの村の雰囲気は全く違うものではなくて、ついスイスへ行く前に行った遠野の馬と暮らすまちでも、似たような雰囲気があったのは、牧畜つながりの生活だからなのかな。
きっと彼らがスイスにきたら、観光地よりも、農家にすごく興味を持つんだろうな。
私も、ファームスティとか面白そうだなと思いました。
アルプスを巡るハイキングコースを歩いていると、通りかかる村の家の周りに見える、あれなんだろう?とか、あれ面白いな。っていうものがちらほら見える。
私は山小屋って大好きで、生活の工夫が見えるような佇まいがあると、ついつい覗いて、どんな暮らしをしているのか気になる。
だからこの仕事をしていて呼ばれたどんな遠くの場所でも僻地でも、行った先に何があるのか、どんな人たちがいて、どんな暮らしをしているのか、少しでも垣間見れて、感じられたら私にはそれがご褒美だ。
チーズフォンデュは、絶景の場所で堪能しました。
チーズフォンデュに夢中で、ふと、顔を上げると、あ!そうかアイガーの脇だった!と気づく。
スイスといい、イタリアといい、美味しくて太りそうなものばかり。
大使館公邸でのコンサートで同じテーブルだった方に、イギリスはやっぱり美味しくない。という話をきき、なんで美味しくないのか、行ってみなくては!と思う。
すると旅の途中から合流した美代子さんの娘さんの友人はニューヨークから来て、世界旅行の途中。
彼女のレポートによると、ダントツでイギリス人男性が一番イケメンなんだそうです。
でもオランダの人は背が高いよね!というところで、私もオランダ経由だったので、相槌を打ちながら、今回のコンサートでピアノ伴奏をしてくれたスイス在住の黒岩かおりさんが、オランダのトイレは扉がデカイのと、洗面台の鏡に自分の顔が映らないほど高くに鏡があるよね。と盛り上がる。
美代子さんは、女性が何かで成功したいなら、弱い男を捕まえないとダメよ。
運転やカメラ撮影や家事もやってくれて、なんでもいいよ。素晴らしいね。っていてくれるような人よ。って、みんなが思わずメモを取りたくなるようなことをおっしゃってました。
なんかまた話それてますか?
アルプス付近の名所は滝が多くて、村の周りの山の上から村の方に向かってあちこちから滝が落ちている。
本当に龍がねむっているようなところ。
というか、まだ龍が生きているところ。
アイガーをすぐのぞむところで音を出して、撮影してもらった時の事がなんだかいまでもはっきり印象に残っている。
日本に帰ってすぐのコンサートでは風の曲を弾く度にアイガーの近くにいた時に吹いていた風を思い出す。
確かに力をもらったんだろうなと思います。
アイガーに。
アイガーは北壁という小説のせいか、非常に近寄りがたい、荘厳な感じで険しいたたずまいをイメージしていたけれど、登山したら違う面を見るのだろうけれど、なんだか懐深く優しい。
スイスという国でアイガーをまじかに見れて、色々な国の方に馬頭琴を聞いてもらい、本当に佐野美代子さんと軍縮大使の佐野利男大使にはお世話になりました。
今年はじめに墨絵画家の山鹿先生が、美炎さん、これでドレス作ったらヨーロッパに行って演奏することになるわよ。
と手渡してくれた墨絵のバラの着物地。
プライベートで行ったイタリアも、突然行くことになった由布院、そのあとにご縁のできた遠野のも、今回のスイスも、なんとなく私には一連の何かの流れのようで、今年これから訪れる、また様々な土地で出会う人たちとも、きっと必然という流れの中で、後で振り返った時に、わかることがあるのかもしれません。
佐野美代子さんがブログで今回の旅とコンサートの事を素敵な写真と共に紹介しています。
佐野美代子さんはザ・シークレットという本の翻訳家としても有名です。
佐野美代子さんのスイスコンサートのブログ↓
スイスコンサート・佐野美代子さんブログ
それと、アイガーと一緒に写真をとってくれた千葉純子さんの細かいところにも目が届くブログはこちら
↓
千葉純子さんブログ・優しい時間
より分かりやすく楽しいのでどちらもご覧ください^ ^