馬頭琴奏者 / 美炎 miho 公式サイト
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 いのちのうた- 2016/09/26 -

Category : BLOG

海峡をわたって、父の元へ。

覚悟はしてたけど、父はもう最後の本は書けそうにない。

もうライブも聞きに来れなくなったので、それならいくらでも家に行った時に弾くからね。

と言ったら、お客さんを呼べと、父は相方の京子さんに今日になって言うので、そんな突然来れる人なんていないわ。

と言っていたけど、お二方来てくれることになった。

高知で演奏をして、その帰りに瀬戸内の、96才になる父のところへ見舞いに。

父も京子さんも私も、これで演奏聴けるのが最後だと覚悟して。

父が京子さんに、今生の最後の演奏だと思ったら涙が出るかもしれない。そんなのは恥ずかしいから、人を呼べ。

そしたら泣かずに済むから。

と。

京子さんは父が泣いてるの見たくないわと、そうね、人を呼びましょうと。

私も、誰かいた方が演奏会ぽくなるからやりやすいかなと思う。

京子さんが、お父さんがね、謝礼だって。と言って私にお金を包んだ封筒を渡すので、いや、それは絶対受け取れないよ。

と逃げる。

お父さんがね、俺だってただで原稿書けと言われたらいやだから、払うのは当然だ。

っていうのよ。それなら、最初に金額を交渉しなきゃだめじゃないのよね。と笑って言っていた。

それを聞いたら、涙が出そうになってしまい、慌てて受け取る。

そして、化粧をして髪を結い、衣装に着替えた。

どうしよう。私が泣いたら。と思うが、泣くわけにはいかない。

なんだか急に辛くなって、こんな時でも泣かずに弾かなきゃいけないなんて、なんて仕事だろうなとはじめて思った。

来てくださるお二方を待つ間に、ヘルパーさんが来て、父を風呂に入れた。

その後少し掃除をして、京子さんが、娘の美炎子です。

馬頭琴をやってるんですよ。

と紹介すると、馬頭琴ですか。聞いたことないです。

どんな音がするんでしょうね。と言うので、京子さんが、美炎ちゃんもしイヤじゃなかったらな、ちょっとだけ、見せてあげたら?と私にそっと言うので、いいよ。

と楽器を出したら、まあ!弾いていただけるんですか?

と言われたので、ほんとうに1分くらい弾いた。

そしたら急にその方が号泣されたので、驚いてしまった。

音楽私は全然分からないんです。でも、なんかうわーってきてしまって。

すみません。すみません。

といいながらまた泣いておられたので、私も少し泣けてしまった。

その方が帰られて、今日のお客さんお二方がみえた。

お父さんと息子さん。

息子さんの方は、この夏、ここでライブした時に、その時はお母さんと二人でいらしてくれた。

京子さんが、息子さんね、ずっと家に引きこもっていて、お誘いしても来ないかなーと思ったけど、聞いたらいいよって、勧めたの。

そしたら来てくれるって!と夏のライブの時に言っていて、そのライブの次の日から、外に出るようになったと聞いたので、何でだかわからないけれど、何かが響いたのかな。不思議なものだと思った。

息子さんはとてもさっぱりした顔をしていて、何かタイミングだったのかな。

息子さんのお父さんが、私は本当に音楽分からないんです。と先ほどの人と同じことを言った。

でも心にきました。

今日はこの息子の誕生日なんです。

と帰るときにいった。

みんなでおめでとうと言った。

父の家に着いて短い時間に心に連続でグイグイなにかくる。

なんだろう今日は。

人の心の何か少しボタンの掛け違えのようなささいなことが、ちょっとした何かでふとタイミングが合うと、動きだすのかな。

父へのコンサートは、弾きながら、最初は無性に悲しくなってしまった時もあったけれど、そのうち、こうやって父を送り出すことができるのかと、幸せだと思った。

そのお迎えが明日か数年後かはわからないけれど、同じことだ。

その後で父と話した。

表現のこと。

美のこと。

動画に撮ってみた。

とても今の自分にぐっとくる内容だった。

いつが最後になるかはわからないけれど、来れるだけまた来たいなと思った。

ただ、確実に抜けていく何か。

昨日までできたことができなくなっていく。

まだ考えて、話をすることは全然できる。

電話での講義はしているようだ。

でももうパソコンの使い方は忘れてしまって、原稿を書くことができなくなった。

なんかそれが切ない。

本も読まなくなった。

私の記憶の最初の頃から父は本読んでるか物を書いてるか、呼吸するようにしていたから。

だけど、それでいいんだ。

少しずつ忘れていき、少しずつ抜けていって、少しずつできなくなっていって、少しずつ死に向かう。

準備をしているんだな。

私も父も。

   
 

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