馬頭琴奏者 / 美炎 miho 公式サイト
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 その人が奏でるもの- 2016/12/12 -

Category : BLOG

何気なくつけた。

パリのクリスマス。

BSだけは見れるうちのテレビ。

地下鉄ミュージシャン。

質の悪いカラオケでアベマリアを歌う中年の女性。

びっくりした。

あまりに上手で。

なんでこんなところで歌ってるのか不思議だった。

聞いてたら涙がでてきた。

たくさんの人が通り過ぎる。

たった一人で歌う。

立ち止まってじっと聴き入る人もいる。

音楽をやっているせいなのか、性格なのかなんなのか、音楽を聴いて泣くことがめったにない私が泣いたのは本当に久しぶり。

不思議だった。こんなに上手な人はプロの中でもそうはいない。

なのに何一つ着飾らずに多くの人がチラリとも見ずに通り過ぎる中、ただただ心をこめて歌っている。

そのあとテレビは彼女の家へ。

オペラでトップの活躍してをしていた彼女は最愛の母親を亡くしてから、心の病気になって舞台にたてなくなったという。

医者の勧めで、地下鉄で歌うようになった。

そして歌うことで救われるようになった。

ということだった。

あの歌は、それを全部体現していたのだな。

あんな声であんな風に歌える人は、歌うために生まれてきた人だ。

トップで歌い続けてきた人が心折れた時に舞台にたてなくなって、

それでもその歌に自分が救われる。

本当に心をこめて余計なものが一切なく、純粋にある時に、音楽の力は最大限になる。

人として、余計なものが一切なく

という状態は難しいものだ。

ある時にそれができても、次にできるとは限らない。

できた成功体験がまた足かせになったりするのが人だ。

私は今、今の彼女の歌を聴くことができた幸運をおもう。

一足早いクリスマスプレゼント。

それと手回しオルガンを回しながら街頭で歌を歌うおじさん。

奥さんと二人暮らし。

クリスマスに何を歌うか、二人でいろいろ考えている。

クリスマスに最愛の人と一緒にいれない人のために曲を選ぶのだという。

そして、お互いがクリスマスのプレゼントは、最愛の人が一緒にクリスマスを過ごせることだ。

だから幸せだと言っていた。

あのお話しみたい。

えーとクリスマスの贈り物
だったかな?

確かこの前に音楽で泣いたのは山形の母校へ行った時。

5年くらい前のこと。

村の人の有志の合唱団がうたった歌で。

私が卒業した高校は、基督教独立学園といって、山形の豪雪地帯の山あいにある日本一小さな高校。

そこの卒業生の村の人の合唱だった。

上手か。

というと上手ではなく、下手でもないのだけど、この山奥にくらしていて、土と共に生きてる人たち。

そういうのやっぱり全部音楽にでてくるな。

と思う。

つい先日、この山形の母校へ、ピアノの竹井美子さんとドラムの前田仁さんと三人で行く。

このお二方には今年あちこちに遠出願っていて、新幹線でGO!じゃないのが、本当に申し訳ないと思いつつ。

スタッドレスタイヤにしておいてよかった。

峠を越えトンネルを抜けたらそこは雪国だった。。

久しぶりに賛美歌を歌った。

賛美歌の和音とメロディーを聞いていると、ほっとする。

それにとてもメロディーが自然で歌いやすい。

ここにくるといともたやすく心は高校時代に戻る。

あの頃、真冬でも裸足だった。

かじかむ指先のまま、鍵盤で賛美歌の和音をなぞりながら、夜の自由時間に教室で歌った。

時には一人で。時には友人と。

パイプオルガンの音色は冬の朝、外は3メートルもの積雪で、それでも日が差して、講堂の高い窓から日が斜めに差してくる。

その冬の光のスジとパイプオルガンの音色は同じだった。

あの時の空気の匂いも思い出せる。

パイプオルガンの音色と一緒になってる。

豪雪地帯の山あいの冬の景色は私にはこの世のものではなかった。

あそこに長年暮らす人にはまた別のものだろうけれど、3年間しかいない私には、毎朝の景色も、夜の星の光が雪に写るんじゃないかという景色もこの世のものではないくらい美しく見えた。

カンジキを履いて雪の中を歩き回ることは慣れても、車の運転が怖いので、冬にくるのを避けていたけれど、あの景色をまた見たくなった。

新しくなった学園の講堂で、パイプオルガンの音色と馬頭琴をかさねたときに、ひっそりと冬の冷たい空気と、深い夜の空気と、星が澄んで見える空気がぜんぶぜんぶ講堂を包んでいるのがわかる。

その中で、携帯もテレビもゲームも受験勉強もなく、朝早くから牛の世話をしたり、みんなでご飯を作って食べて、コーラスをして、祈って、そんな生活をしている若い人達と、先生方とが、ある意味数少ない娯楽であろうこのコンサートに耳を傾けてくれている。

そんなものがぜんぶその日の音楽会にあった。

私の音楽の原点は幼い頃におじいちゃんがピアノを弾いて、それに合わせて歌ったり、バイオリン弾いたりした延長線上にこの学園がある。

ここで弾くと、自分の原点を思い出して、初心にかえることができる。

その人にはその人にしか奏でられない音楽がある。

   

    
 

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