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 アイルランドの旅3- 2019/05/15 -

Category : BLOG

日没が夜9時ごろと分かって、アラームもかけずに目覚めた時間が起床時間。

ゆっくりアイルランドブレックファーストを下の階の部屋で食べる。

羊が草を食んでいるのが見える。

アイルランドを観光しているのはアメリカの人が多いのかなという勝手な想像。

先祖の故郷を見てみたいというような感じなのかしらと。

イングリッシュブレックファーストと何が違うのかよく分からないが、なんたらソーダというパンがアイルランド伝統のパンらしい。

昨晩のスーパーの買い物でそれを見つけて買って食べた。

食べたことの無い独特の風味があり、ふわふわというより、しっとりどっしりという感じで腹持ちがいい。

小さな黒いケシのみのような粒や、ナッツなども入っている。

この風味は何かハーブでも入っているか、発酵が独特なのか。

この旅ですでにやみつきになり、メニューにあると頼んで食べる。

帰る前日のスーパーではこのどっしりした伝統的なパンを買って帰るか迷ったが、すぐ車で山形に行く事を考えれば、山形はいつでも食べ切れないほどの料理が並ぶので、そこにこのパンが入る余地はないなと諦めた。

これを朝に食べて、昨日の残りのスーパーで買ったものをサンドイッチにして林檎と持って出れば充分だと思う。

結局この朝食べた食事で全く腹は空かず、山を降りて午後2時過ぎにせっかくあるから食べようかと、車の中で持っていったサンドイッチを食べた。

今日はまたここに一泊するので荷物をほぼ置いて、りんごとサンドイッチと雨合羽とカメラと水だけ持って出る。

雨を覚悟していたので登山用のかなりしっかりしたものを持ったのだが、こうくるくる天候が変わるのでは、降ってもまたすぐやむのかもしれない。

もっと手軽な雨具でいいのかもしれないと思う。

エリガル山は独立峰で木もないし、ゆっくり登っても往復2.3時間である事を思えば、途中雨に打たれても雨をある程度はじく上着を着ているし、車までは迷わず帰れるだろうと思い、結局この雨合羽もなんだか重くて車に置いていった。

宿のあるスリーブリーグは600メートルを超える断崖絶壁が欧州一の高さであり、景勝地として有名な場所だが、そこを外れるとのどかな牧草地が広がる景色で、小さな道を小さな丘の波を越えて車を走らせると、可愛いお家があちこちに点在していて、どの家もドアがカラフルで花が咲き乱れている。

そんな中、5月頭のアイルランドに咲いている花はハリエニシダとサンザシとガイドブックにあった。

ハリエニシダは、ゴツゴツした藪に真っ黄色な花がわんさか咲いていて、群生しているところが沢山あった。

なんとこの花は油分が多いため、発火して火事になる事もあるらしい。

ユキさんが、聞いた事もない面白い名前だね! どうしてもハリエ西田さんって聞こえるんだけど。と言って笑った。

西田さんいっぱいいるね〜とハリエニシダの群生があるたびに言うので、こちらもエニシダにハリのあるもの。というニュアンスで耳に聴こえていたのが、いつのまにか、ハリエ西田さんに聞こえてきた。

ドネゴール近辺もエリガル山の他に行ってみたい所の一つとして風の谷があった。

でものんびりと出たので、いくら夜9時まで明るくてもなんとなくまだ昼過ぎて山に登るなんて考えられないと思ってしまうのと、夕方から天気が崩れそうだと聞いていたから、帰り道に寄れたら寄ると思っていた。

点在する可愛いお家がいつのまにか無くなり、緑の草原から何も生えていない荒涼とした土地がうねうねと広がるエリアをどんどん車で走る。

私がイメージしていたアイルランドだ。

なぜこんな荒涼とした土地に惹かれるのかわからない。

丘を登って少しまた緑の土地になってきたなーと思ったら素敵な谷に出た。

おや?これはもしかして行きたいと思っていた風の谷か?

そうらしい。

通り道だった。

風の谷の上で話をしてる声がすでに響いているのがわかる。

更にこの谷を降りて北へ向かう。

ほとんど北の端まで行くとエンヤの実家で経営しているバーがあり、そこから小一時間のところにエリガル山がある。

まずはもちろんエリガル山を目指す。

なんかちらほらとうねる山並みのはるか向こうにエリガル山らしき頭の先が見える。

なんか高くない?

だんだん近くにつれ、エリガル山はあれだとはっきりしてくるのだが、ハッキリしてくればしてくるほど思ってたより高く見えて急斜面に見える。

細かい瓦礫の山とも見えて、あの急斜面で瓦礫だと滑らない??

と思う。

登山道があるのかもよく分からず、とにかく近くへ。

アイルランドに行くと急に決めてから、すぐにアイルランドを検索していた時に都内でアイリッシュミュージックのコンサートがある事を知ってチケットを取る。

その時に誘ったのが今回の旅のパートナーであるユキさん。

いくいくー!でもなんでアイルランド音楽?って聞くので、アイルランドに行くから!というと、私も行きたいなー五月の連休なら今年は10連休だからいける!と言われてすぐに飛行機のチケットをおさえたのだった。

今までアメリカやイタリア、イギリスやハワイのカウアイ島などもだいたい10万前後でチケットをとっているので五月の連休のお値段が心配だったが、まだ巷で10連休が話題になる前だったからか、その値段でとれた。

そしてコンサートに行くと、アイルランド物販ブースがあり、のぞいてみるとガイドブックがあって、その著者のナオコさんに会えて、見所を直接聞くことができたのだった。

アルタンというバンドがドネゴールにある湖の名前からとっていて、ドネゴール地方の民謡を演奏するということで、そのうちの一曲はどうも何処かで聞いたことがある曲だった。

地図を見ていてそのアルタン湖がエリガル山の麓にあると知る。

アルタンのCDジャケットがエリガル山を望む廃墟から撮っていたので、その廃墟もどこにあるんだろうね、とユキさんと話していた。

いよいよエリガル山に近づき、ふと脇をみるとあれじゃない?という廃墟がチラリと見える。

山を降りたら後で行ってみよう!となり、山の登り口みたいのはどこだろうね?と言いながらしばらく行くと、小さな駐車場があり、そこから登るらしかった。

駐車場からとにかく一番てっぺんを目指せばいいだけなのは分かるが、やはり登山道はなかった。

窪みはぐちゃぐちゃしていてぬかるんでいるので、それを避けながら細かく迂回してるだけで、なんとなく体力を使う。

やっとぬかるみエリアを抜けて、斜面を登り始めると大きな瓦礫がゴロゴロしている。

キラキラ光った水晶のような石や大理石のような石がゴロゴロしている。

エリガル山のエリガルというのは昔ギリシャ人が登って名付けた名前らしく、祈りという意味だそうだ。

ドネゴールに惹かれたのもこのエリガル山に惹かれたのも何かご縁だろうなと思わずにはいられない。

しかし、全く体を鍛えていない私は一番高いところまで行けるのか?半ば半信半疑で登っていた。

それでも独立峰であり、この辺りで一番高い山だから、てっぺんからの景色が見たい一心だ。

いや、ちょっとまって。

私はこうみえて高所恐怖症だ。

今まで撮ってきた写真。たしかに山の上だったり、どこの崖ですか?というビューから撮ってますが、撮影となると仕事モードになるのか、あまり怖くなくなるのだが、それが終わると急に腰がひけて、何ここ、むり。

となる。

学生の頃していた登山も、たまに巡り会うクラクラする場所はそんなに多くないし、むしろビルとか橋の上とかの方が怖い。

マンションの上の階のベランダとか、階段とか、少しでも隙間があるとそっから自分が落ちると思って足がすくむ。

実家の近所の高速道路の陸橋の網目からいつか自分が吸い込まれて落ちるに違いないと、本当にわずかな切れ目が怖くて三輪車で渡るのによほどの勇気がいった思い出がある。

頂上のあたりが、遠くから見た感じ、もしかして怖いやつ?っていうのが頭をかすめるが、三日月型のアルタン湖が見たいし、周りがどうなってるのかやっぱり知りたい。

途中まではまあ良かったが、半分から上が急に急斜面になってきて、瓦礫も細かくなるので、きっちり足を置かないとずるっとすべる。

そこで断念したオーストラリアからの夫婦がいた。

2.3時間のハイキングルート的な登山なので、みんなほぼ何も持たないで登っている。

途中の眺めも充分圧巻で、ふと我に帰ると怖くなりそうだが、素晴らしいという思いの方がまだ勝る。

それでもだんだん上に行くにつれて、ここで足を踏み外したらやばそうな箇所だらけになってくる。

ふと下からアップテンポで登ってくる杖をついた二人のおじいちゃん。

え?なんでそんなテンポ早いの?

あっという間に追いつかれる。

そして歌まで歌ってる。

はーい!

登るの初めてかい?それはおめでとう!

なんと日本から!

私はもう160回この山に登ってるよ!

65歳と75歳のおじいちゃん。

僕たちが行くルートをよく見ていて。

と右巻きに行くルートを行く。

そして何か、恐竜の巣のようなものがあった。

下の方に後で行こうと話していた廃墟のお城だと思っていたが、教会が見える。

上の湖が三日月型のアルタン湖。

下の湖はその反対にある、廃墟の教会のほとりの湖。

この谷がとても気に入った。

川筋が廃墟の教会の脇と小さな村を通って先の湖に注いでいる。

村の名前と谷の名前と結局分からずじまいだったが、この谷にはいかにも伝説とかがありそうだ。

恐竜の巣はこの谷に向かってあるので、本当にプテラノドンがここを飛び立って谷に行きそうな景色だよ。

いつまでもここでぼーっとしたかったが、時折吹く風が強く、吹き飛ばされたらかなり怖い場所。

やはり一番見晴らしもいいが、足がすくむ。

こういうところでジャンプしたりする人の気が知れない。

風が冷たくて少し雲が出てきた。

おじいちゃん達が、もうすぐ雨が降るから頂上でのんびりしてたらダメだよと言った。

のんびりなんてできない。

怖いんだもの。

スリルも増すが、エリガル山だけが三角にそびえているお陰でこれだけの眺望が楽しめる。

さて下ろう。

ずり落ちる瓦礫の斜面は神経を使う。

これ、スキーのくだりだと思って思い切って足に体重かけちゃう方がいいね。と若い頃はスキー狂いだったというユキさんが止まらないーといいながら斜面を降りる。

テンポ良く下るともういつのまにかぬかるみ地帯。

上から見ると、ぬかるみの少ないエリアがなんとなく分かるので、そこを早足でいく。

ふとポツンとちいさな雨粒があたる。

あ、雨だよ!

と言うと二人でまだこんなに早く走る体力があったのか。というほどのダッシュで車を目指す。

走る勢いに合わせるかのように急に雨足が強くなり、そのままの勢いで車に転がり込み、ドアを閉めた途端猛烈な豪雨。

なにこれ。

と笑ってしまった。 汗と雨でズボンが足に張り付いて気持ち悪い。

それでも3分ほどするとまた雨が急に止んだ。

では廃墟の方に行ってみようと車を出す。

その辺りにはハリエニシダさんが沢山いて、何ともいえないココナッツのような甘い香りが漂う。

ハリエニシダさんってこんな甘い香りだったのね。

この教会は日本では江戸時代の最期のあたりか、旦那さんが亡くなった記念に奥さんが建てた教会だそうだ。

建物の石は湖の底の石やエリガル山の石だそうだ。

塔の上に鳥の巣があって、ひなの鳴き声と親鳥の鳴き声がした。

昨日ドネゴールへ行く道の途中に撮影したちいさなお城の廃墟とは雰囲気が違う。

冷たい風が穏やかに吹き始めて冷えてきたので車に戻ってサンドイッチを食べる。

ドネゴールのチーズとサラミとソーダパンのシンプルなサンドイッチ。

麺だけ。とかパンだけ。とかご飯だけ。

という食事が続いても全然大丈夫な人なので、だいたいどこの国でも食べ物で暗い気持ちになることはない。

そこの国ではそこの国のものを飽きずに美味しく食べれる。

そういえば、プリンセスクルーズに演奏で二回、9日間ほど乗った時は食事に飽きた。

なぜかというと毎度レストランのフルコースが食べ放題だったからだ。

ご馳走というのは飽きる。

欧米ではサンドイッチは間違いなく美味しく安い。

あとアイルランドで重宝したメニューは今日のスープというお品書きだ。

サンドイッチ以外のメニューを頼むのには少し勇気がいる。

ものすごい量が出てきたりするからだ。

でも何かあったかいものが食べたいなという時に今日のスープは野菜とお肉のスープとあのアイルランドのソーダパンが添えられてきて、こちらの人は前菜として頼むのかもしれないが、私達にはこれがちょうど良かった。

ユキさんが持っていたアマゾンミュージックでアイルランドといえばという曲たちを聞こうと、アルタンやエンヤなどを選曲して聴きながら、そろそろ行こうかとなった。

帰りは行きとは違うコースで行こう!

と車が走りはじめると、さっきまで青空も垣間見れてていたが、すっかり雲がかかり雨が降り出した。

降りはじめると止む様子のない雨は空も景色もみんな白くしてしまって、冬に逆戻りしたような天気だ。

それでも久しぶりに使った体力と、山の景色などに体も心も満タンになり、ただだだ宿に帰るだけだった。

1時間も行った頃か、どちらからともなく、エンヤのバーに行くの忘れた。と言った。

え!?

えーっ!!

さっきエンヤ聞いてたじゃん私達。

完全に忘れてたね。

という事になる。

でも私は全然平気だった。

ちょうどアイルランドへ行く前々日、エンヤの特集番組を見た。

実家のバーが出てきて、すっかり私は行った気になり、もういいか。って気持ちの方が大きかったようだ。

そして今日はもうこれで充分だった。

外はすっかり冷たい雨で、サンドイッチのせいかあまりお腹すいていなかったが、何か暖かいものを食べたくなった。

まだシーフードにありついてないね。

私のお目当ての生牡蠣とユキさんお目当てのムール貝。

宿の方面にある海辺の町にシーフードレストランありそうだよね。

と目指す。 そんな看板があったので、入る。

牡蠣とムール貝はなかった。

でも食べたいと思ったのはシーフードチャウダーだった。

今日のシーフードチャウダー。

ソーダパン添え。

こってりしていて濃厚なシーフードの出汁がきいている。

最後は食べきれないほどたっぷりだった。

宿についてひたすらねむる。

止みそうにない冷たい雨はそろそろ魔法が切れて明日は1日中雨かもしれないなんて思う。

それでも全然悲しくはない。それほど素敵な田舎での2日間だったので、もう何もなくても文句はない。

明日はスライゴーに移動だ。

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